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住民主体の地域包括ケアシステム構築を目指して~上田・NPO法人『新田の風』の挑戦vol.6

2016年11月22日 14:40 by masuo-i
2016年11月22日 14:40 by masuo-i

第6章「地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割―かかりつけ薬局に助けられた事例を通して―」

今回は、訪問診療医の立場から"かかりつけ薬局・"薬剤師さん”に助けられた事例をご紹介します。

そこから地域包括ケアシステムにおける"かかりつけ薬局・薬剤師”の役割について私見を述べさせていただきます。

 

事例1 78歳男性 傷病名:胃癌末期、腹膜播種、腎瘻カテーテル留置、PTCDチューブ装着

上記の状態で総合病院から紹介され、2010年8月より在宅療養開始。

在宅ターミナルを目指して訪問診療、訪問看護を開始。

2010年8月25日深夜、38.9度の熱発にて往診。カテーテルフィーバーと考えられ、抗生物質投与が必要であるが、薬局はどこも終了していた。すると介護者の妻が「かかりつけ薬局さんが夜中でもいいですよと言ってくれた」とのこと。その言葉を聞き、深夜ではあったが電話をして、抗生物質を処方投与ができた。翌日は解熱して事なきを得て、再入院を免れた。

*この時再入院していたら、もう2度と在宅には戻れなくなった可能性あり。
*その後は比較的穏やかな日々を過ごされ、最後は在宅で看取ることができた。

 


事例2 75歳女性 傷病名:悪性リンパ腫の終末期、膀胱内バルンカテーテル留置

上記状態で総合病院から紹介され、2012年8月より在宅療養開始。

2012年11月11日(日)午前6時頃39度の熱発。その後、痙攣をおこしたとの連絡あり。咳や鼻水はなく、尿路感染症が疑われた。ところが、主治医である私は新潟(県外)への泊まりの視察旅行中。直ちにかかりつけ薬局に緊急処方薬を依頼し、ご家族に取りに行っていただき抗生剤を投与
直ぐに上田に戻り、夕方往診したところ患者さんは落ち着いていた。帰りに処方箋をかかりつけ薬局に届けた。
    
*このケースはご家族がパニックになり「救急車を呼びましょうか?」と言っておられたところを、かかりつけ薬局との連携で再入院を免れた。
*この日は休日で本来の"かかりつけ薬局”は休みであったが、休日も開いている薬局に私が直接連絡し、ご家族に薬を取りに行ってもらった。
    
この他にも、在宅医療を継続していて何度も"かかりつけ薬局”に助けられた事例は多々あります。

さらに上田市では、本来の"かかりつけ薬局”でなくとも、いざという時は他の薬局が"かかりつけ薬局”機能を果たしてくれます

事例2のように、休日であれば別の薬局が対処してくれます。

麻薬や特殊な薬剤で本来の"かかりつけ薬局”に置いてない場合でも、直ぐに必要な時には、経営母体の違う他の薬局に連絡してくれ、その薬剤が置いてある薬局を紹介してくれます。それを置いてある薬局に振り替えて利用することが可能となるのです。

在宅医療の現場では24時間・365日の対応が求められますが、これは"かかりつけ薬局”の連携で対処できています。

地域包括ケアシステムにおける"かかりつけ薬局”の役割は、一薬局だけではなく、その地域に点在する"かかりつけ薬局”の相互協力のもとに完結しているということがお分かり頂けると思います。

全てを院外処方箋に依存している在宅訪問医にとって、これ程ありがたいシステムはありません。

最近は、独居老人や認知症患者さんのかかわりで連携を取り合うことにより、在宅での生活が維持出来ているケースも増えています。

 

事例3 104歳女性 関節リウマチ、アルツハイマー型認知症(軽度)

痛みを訴えることが多い方であるが、どこまで客観的に評価できるのか難しいケース。介護者の娘さんは「いつも痛がっているので、どこまで本当なのか分からない」と笑っているだけ。あまり薬剤は増やしたくないし、ことに痛み止めの類は副作用が心配です。

そんな状況で恐る恐る薬剤を変更していたら、かかりつけ薬剤師の生情報あり。「今回の鎮痛剤は効いているようです」・・・。

薬を届けてくれた時に、ご本人から貴重な情報を引き出してくれたのです。さすが専門家と頭が下がりました。これこそがチーム医療ではないでしょうか。


 
事例4 88歳女性 アルツハイマー型認知症、高血圧症、便秘症。独居

2週間に1度訪問診療。かかりつけ薬局には午前中にFAXしておき、午後訪問診療の後に配達していただいています。処方箋はご自宅の壁に貼り付けたクリアファイルの中に入れています。それを配達時に薬剤師さんが持ち帰ります。

FAXで報告してくれます。「朝の薬はきちんと内服できている。夕食後の薬は8日分余りあり」というような感じです。そこで次回の処方数を修正できます。

独居の方は、きちんと服薬出来るかがキーポイントになります。難しくなれば分1(朝食後)にみに変更します。私は処方箋を置いて帰るだけですが、その後薬剤師さんが服薬管理をしてくれています。

私はクリニック院長ですが、医師は私1人です。24時間・365日ひとりで対応しなければなりません。

そこに、訪問看護師、ヘルパー、訪問理学療法士、ケアマネジャー、そしてかかりつけ薬剤師がいます。所属は違えども、一人の在宅療養患者さんにはいろいろな専門家が関わってくれています。これは私にとっては大きな支えとなっています。「一人ではない」ということに気付くと、どんなに大変な症例であっても少し気が楽になります。

地域包括ケアシステムにおける"かかりつけ薬剤師”の役割について、私が助けられたケースをご紹介致しました。

上記の事例でお分かりと思いますが、24時間・365日対応しなければなりません。さらには日曜、祭日に特殊な薬剤が必要になることもあります。

このような状況に対して、一かかりつけ薬局・薬剤師だけですべてに応じることは難しいと思います。

上田薬剤師会地区では、地域に点在している"かかりつけ薬局”が相互に協力・補完し合っていることで乗り切れています。

さらには、かかりつけ薬局・薬剤師さんのピンポイント情報が診療現場では極めて役に立っています。

いろいろと述べてきましたが、実は地域包括ケアシステムで1番大切なことは、薬や物品などではなく"ひと”です。

支え支えられて一緒に働くことができることではないでしょうか。

これからも多くの薬剤師さんと関わり合って在宅医療を進めて参ります。

"ひとりではない”という思いを胸に秘めて。


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