「ドラッグ・ウオッチング」~確かなデータに基づく薬のエビデンス~Vol.3
抗生物質(Antibiotics)と整腸剤(Prociotics)
抗菌薬の服用によって下痢が起こりやすいことは良く知られています。その名の通り、悪さをしている菌に効くばかりか腸内細菌叢をも荒らすためです。
前回、マクロライド系抗菌薬においてはそれに加えて消化管運動を促す作用もあることを紹介しました。
一方で、抗菌薬による下痢を予防するために最も使われているのが整腸剤(生菌製剤ともいう)です。英語で言えば「プロバイオティクス(probiotics)」ですが、その語源は共生を意味するプロバイオシス(probiosis;pro 共に、~のために、biosis 生きる)です。抗生物質を意味する「Antibiotics」とは対極にある概念です。
そもそも「probiotics」には下痢を予防する効果はあるのでしょうか?
これは、かなり高い確信をもって「ある」と言うことができます。それを示した研究を挙げれば枚挙にいとまがありません。
いくつか例をあげます。まずは、エビデンスの中でもしばしば最高峰に位置づけられるコクランのシステマティックレビューでは、プラセボと比べて下痢が4割以上減ることが示されています(NNT=10-17)。クロストリジウムディフィシル関連の下痢については60%以上減らしています(NNT=27-41)。
(Cochrane Database Syst Rev 2013 May 31;(5):CD006095)
子供を対象にした試験においても下痢を減らすことが示されており、Lactobacillus (L. casei, L. plantarum, L. rhamnosus GG), Saccharomyces (S. boulardii, S. thermophiles), Bifido bacterium といった菌株の有効性が確かめられています。
菌株ではピンとこないかもしれませんが、要は一般的な整腸剤に入っているようなもので有効なのではないかということです。
こちらも統合解析した結果、下痢は60%以上減り(NNTは27-40)。問題となる副作用もみられませんでした。(Ann Intern Med 2012 Dec 18;157(12):878)
ついでに触れますが、ヨーグルトを継続的に食べていると下痢が緩和されるとする研究もあります。
平均年齢70歳の202名の入院患者で、8日間ヨーグルトを食べるグループと食べないグループに分けた研究ですが、下痢の率が12%と24%でヨーグルトを食べている方が明らかに少ないことが分かりました(NNT=9)。(Dig Dis Sci 2003 Oct;48(10):2077)
こうしてみると、整腸剤による下痢予防のメリットは明らかで、下痢を起こしやすい抗菌薬との併用処方が多いことも納得のいくことです。整腸剤は薬価も安いですから、使わない手はありません。
そんなアタリマエに行われている併用処方ではありますが、医師がよくする間違い処方があります。
それが、
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