第5章 「風の足跡」~上田薬剤師会と共同の終末期医療への挑戦~
今回は、上田薬剤師会と共同してアプローチしている終末期医療に対する1つをご紹介します。
現在、日本の救急現場では大変なことが起きています。それは、癌の終末期の方や超高齢者の方が数多く心肺停止状態で救急搬送されていることです。
下記の記事は昨年6月号の『長野医報』に掲載された記事の抜粋です。
東京都などの大都会の方がより深刻なようです(参考資料:http://www.sankei.com/life/print/151001/lif1510010013-c.html)。
私も病院勤務医時代に救急(ICU)当直をしていて、最後は植物状態になって延命せざるをえない患者さんを数多く作ってきました。
そのような方々が亡くなる最後の時まで長年つきあっていると、「これは医療ではない! 自分は罪を犯しているのではないか?」と自問することがたびたびありました。
「延命の限りを尽くした挙げ句の"看取り”」がなんと凄惨なものか........を嫌と言うほど体験させられました。
私が在宅医療を続けているのは、この様なコースに乗せないためです。言うなれば、これまでの『罪滅ぼし』といっても過言ではありません。
昭和の時代はまだ良かったのです。しかし、平成に入ると超高齢の方が救急搬送されるケースが年ごとに増えてきました。将来はもっともっと熾烈になることでしょう。
そこで編み出したのが『いのちの選択』という簡易版エンディングノートです。
現在『人生のしまい方』という独自のエンディングノート作成中ですが、その前に簡易版(緊急版)エンディングノートを作りました。実物がこれです。
これは"お薬手帳”に挟み込めるように作ってあります。いざという時には「健康保険証とこれを挟みこんだお薬手帳を持って救急車へ」とお伝えしています。
このカードは上田薬剤師会のかかりつけ薬局に置いてあります。どなたでも無料で手に入ります。
救急当直のDr.にはこれに従う法的な拘束力はありません。しかし、診療の手助けにはなるはずです。
死を忘れてしまっている現代の日本人においては、究極の選択を迫られた時、本人の意識がない場合に家族は「できるだけのことをして下さい」と言うしかないでしょう。こういう時にこそ、まだ落ち着いている時に用意しておいた『いのちの選択』が生きてくるのです。
ご本人の希望が分かっていれば、どれだけ終末期医療現場の判断の手助けになることでしょう。
どうでしょう?日本中のかかりつけ薬局の皆さんに立ち上がっていただいて、この『いのちの選択』の様なものを啓蒙普及していただければ、日本の医療・福祉に多大な貢献ができ、後世への負担も相当に軽減できるのではないでしょうか。
これが全国に広まることを切に願っています。
読者コメント