原点に回帰した患者本位の医薬分業へ
東京大学名誉教授 伊賀 立二
わが国において、国策としての医薬分業がスタートしてから40年。
21世紀に入ると遅々として進まぬ分業を促進させるために、病院の大きな収入源であった薬価差益を大幅に縮小させるとともに、院内・院外間で処方箋発行料を新たに設定し、さらに調剤技術料に大きな差をつける施策による、いわゆる経済分業の推進が図られた。
その結果、現在、処方箋受取り率による医薬分業率は全国平均で70%に達している。
しかしながら、現実には門前分業が大きな割合を占めており、大病院等の門前に調剤薬局が乱立し、呼び込みはないものの、かつての運転免許試験場前の代書屋群を思い起こさせる風景が出現している。
いま、患者の利便性をないがしろにした門前中心の医薬分業が、大きな曲がり角にきたことは、経済分業の必然的な帰結といえる。
ここ数年の規制緩和の流れの中で、薬局の立地条件が緩和され、病院の敷地内での開局が可能となったことから、国立大学系をはじめ公立系の病院で敷地内薬局開設への流れが始まり、さらに、院内調剤回帰の動きも始まっている。
この動きは医薬分業のメリットが感じられない患者の立場からは歓迎すべきものであり、特に救急患者をはじめ高齢者や小児にとって利便性が向上し、大きなメリットとなるであろう。
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