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「ドラッグ・ウオッチング」~確かなデータに基づく薬のエビデンス~Vol.2

2016年09月26日 07:26 by y_zakiyama

マクロライド系抗生物質のさまざまなエビデンスをみる

マクロライド系の抗生物質はとてもポピュラーです。
クラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッドなど)、エリスロマイシン(商品名:エリスロシン)、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック) など、世界的にも、日本においても本当にたくさん使われています。
 
副作用の発生が少ないようにみえますし、カバーする菌もそれなりに多いからでしょうか。最も古いマクロライドであるエリスロマイシンは、1952年にフィリピンの土から発見されています。

マクロライド系抗菌薬は、化学構造によっていくつかの系に分類されますが、系により細菌への作用の仕方や対応する細菌の種類が異なります。

★マクロライド系抗生物質の基本構造と食事の影響について

マクロライド系抗生物質は、基本構造としてはラクトン環が連なった、大環状(マクロ)ラクトンを作っています。これが「マクロライド」と呼ばれる所以で、分子量がとても大きいのです。
 
中でもアジスロマイシンはラクトン環の数が15個と多いため、胃酸に対する安定性、血中半減期が優れています。1日1回で服用が済むのもそのためです。
 
基本的にマクロライド系の消化管吸収はさほど良くありません。そのため空腹時服用が良いとする書籍もあります。例えば、経口のクラリスロマイシンのバイオアベイラビリティは50%です。食後摂取により効果の発現が遅れ(ピークタイムが2時間→2.5時間ほどになる)、最高血中濃度が約24%上昇するとの報告があります(J Clin Pharmacol. 1992 Jan;32(1):32-6.)。

しかしながら、食事による活性代謝物への影響は微々たるもので、AUCにもほとんど大きな差がないことが分かっています。従って、クラリスロマイシンは食事に関係なく摂取して良いと言えるでしょう。

★マクロライド系抗生物質はとにかく耐性菌が問題

マクロライド系の抗菌薬は、呼吸器感染症の原因になるマイコプラズマ、レジオネラ、性感染症の原因になるクラミジアあるいは肺などの呼吸器系感染症によく使用されますが、経口薬は効果がもの凄く高いわけではなく、重症感染症にはあまり向いていないのが特徴です。
 
肺炎球菌や溶血性レンサ球菌などのグラム陽性菌にも効果があるとされていますが、実際にはこれらの菌においてマクロライドの効かない耐性菌が増えていることが問題視されています。家畜領域で安易に使われ過ぎたことも、耐性菌が蔓延するのに大きく寄与しています。
 
厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の資料によれば、
・肺炎球菌の86%はエリスロマイシン耐性(2012年)
・A群溶連菌の52.9%もエリスロマイシン耐性(同年)
となっています。

効果があると言ってもこれでは使えません。マクロライドには交差耐性がありますので、エリスロマイシン耐性であれば通常クラリスロマイシンやアジスロマイシンも耐性です。

それ以外にも、呼吸器疾患の原因となるマイコプラズマや胃がんや胃潰瘍の原因として有名なピロリ菌においてもマクロライドの耐性菌が増えていると言われています。とにかくマクロライドは耐性菌の問題だらけです。
 
★バイオアベイラビリティが低いのであれば静脈注射はどうなのか

バイオアベイラビリティが低く中途半端になってしまうのであれば、静脈注射にしてはどうかという発想もあるかと思います。

例えば、アジスロマイシンの経口剤のバイオアベイラビリティはおよそ37パーセントとインタビューフォームに記載があります。これはあまり良い数値ではありません。しかし、静脈注射ではこれが100%になるわけですから、およそ3倍の効力をもつことが想定できます。実際にマクロライド耐性の肺炎球菌に対してすらも静注では効果を示したという研究があります。(Intern Med. 2009;48(7):527-35)。

もはや、ここまでカバー範囲が広いとなるとかなりの広域抗菌薬といっても良いレベルです。アジスロマイシンのSR製剤や経口薬とはやや次元の異なる薬剤といって良いかもしれません。

★マクロライドの長期投与

通常、抗生物質は必要な時に短期間使い飲みきるというのが一般的ですが、マクロライド系薬剤に関しては抗炎症作用があるのではということで、日本では汎細気管支炎(DPB)や慢性副鼻腔炎などの治療によく用いられています。

筆者は薬剤師になりたての頃、抗生物質は短期使用が原則という思い込みがあり、クラリスロマイシンやエリスロマイシンが90日分とか長期処方されているのをみて「こんな使い方があるのですか?」と上司に聞きにいったことがあります。ただ、周囲に聞いても「そういう使い方があるので、そういうものだと思って出してよい」程度の回答しか得られなかったことも覚えています。

後から調べると、これは「当たり前」に行われている処方だったのです。海外においても慢性呼吸器疾患に使えるのではないかと考えられおり、臨床試験の知見が積み重なってきていますが、よくよく調べてみると支持する根拠は微妙なところです。

例えば、聴覚障害・安静時頻脈は認めず,補正 QT 間隔延長の明確なリスクを有しない COPD 患者を対象にしたプラセボ対照試験では、1年間の服用継続で、アジスロマイシンによって急性増悪の頻度が一患者あたり、年間1.83回から1.48回へ減ることが示されています。ただし、聴力低下の副作用がプラセボ20%に対して、アジスロマイシン群25%と増えています(NEJM 2011:365(8):689 698)。

また、BLESS試験と称される研究では、非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者117名(平均62.3歳)において、エリスロマイシン200mg1日2回継続の効果が検討されています。

この二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験では、エリスロマイシン群59人、プラセボ群58人にランダム化され、12カ月治療が行われています。結果として、患者一人当たりの年間平均肺増悪は
・エリスロマイシン群:1.29 回[95%信頼区間 0.93-1.65]
・プラセボ群:1.97回 [95%信頼区間 1.45-2.48]
年間で患者1人当たり0.7回ほどの増悪減少となっています。しかし、マクロライドの耐性菌は当然ながら増加しています(JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1260-7.)

そしてついには、ランダム化比較試験のデータが出そろってきた結果、それらの研究を網羅的に集めてメタ分析したシステマティックレビューが発表されています(PLoS One. 2014 Mar 6;9(3):e90047.)。

その研究では、小児および成人の非嚢胞性線維症性の気管支拡張症に対するマクロライド長期投与の効果が検討されています。そして、確かにマクロライドは増悪リスクを有意に減らしました。

なお、成人における相対危険度は?0.59[95%信頼区間0.40~0.86]、小児においては?相対危険度0.86[95%信頼区間0.75~0.99]で、患者QOLも改善したと結論されています。

しかしながら、増悪による入院リスクを減らすこともなく、下痢の有害事象が多いのが難点です。一般に抗菌薬は腸内細菌叢のバランスを崩すので下痢を起こしやすいのですが、それに加えてマクロライドにはモチリン様作用というものがあります。

モチリンは消化管の蠕動運動を活発にするホルモンですが、マクロライドも同様に消化管運動を活発にすることが報告されています。従って下痢や腹痛がでることが多く、特に服用当日など早期にでる下痢はこの作用による可能性が高いとされています。この副作用を逆手にとって、ICU(集中治療室)患者の便秘予防に使うこともありますが、多くの場合好ましい作用ではないでしょう。
 
色々と研究がありますが、使い過ぎと耐性菌の増加はトレードオフの関係にあり、その問題が解決されたわけではありません。

リスクが減ると言っても、いかほどのものかというのは上記の通りです。従って、この長期投与の扱いについては世界的にも一定のコンセンサスがありません。
 
★マクロライド系薬剤によるQT延長

あまりにも「当たり前」に使われているマクロライドですが、稀ではあるものの重篤化しうる副作用もあります。それが、QT延長(心電図異常の一種)とそれに伴うtorsade de pointes(不整脈)です。

実際に米国における研究では、アジスロマイシン服用により患者の心臓死のリスクが高くなることを示唆する研究があり、100万人服用中、47名の心疾患死亡増という結果が出ています(N Engl J Med 2012; 366:1881-1890)。心疾患のハイリスク群ではさらにリスクがあがるので、注意が必要です。割合としては少ないですが、致死的になりうるので無視はできません。

また、2013年3月には、FDAがアジスロマイシンによるQT延長について警告を出しています(http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm341822.htm)。

★スタチン系コレステロール降下剤との相互作用

マクロライド系薬剤で注意すべき飲み合わせの1つとして、スタチン系コレステロール降下剤の併用があります。横紋筋融解症や腎機能低下リスクを上昇させる懸念があるためです。

スタチン服用中の高齢者がクラリスの服用により、筋肉や腎臓の問題が増え、総死亡率も上昇するとする研究があります(Ann Intern Med. 2013;158(12):869-876)。

その絶対リスク上昇率は0.02%(95%信頼区間は0.01?0.03%)、すなわち5,000人に1人程度が横紋筋融解症による入院と頻度は極めて低いですが、致死性の副作用なので無用にリスクを踏むような処方をみると気になってしまうのです。

例えば、スタチン服用中の患者さんが風邪などで受診した際に安易にクラリスが処方されているのをみるとどうかと思うわけです。

ちなみにその研究では、プライマリアウトカムを抗生物質処方後30日以内の横紋筋融解症による入院としたものですが、対象者は65歳以上、スタチン服用下でクラリスロマイシン(n=72591)またはエリスロマイシン(n=3267)を処方された患者とアジスロマイシン(n = 68478)服用者を比較しています。

横紋筋融解症発症による入院の非併用時と比べての相対リスクは2.17 [95%信頼区間, 1.04-4.53]) で、急性腎障害の絶対リスク上昇率は1.26% [95%信頼区間, 0.58%-1.95%]で、相対リスクは1.78[95%信頼区間, 1.49-2.14]) 、そして総死亡においては絶対リスク上昇率が0.25% [95%信頼区間, 0.17%?0.33%]; 相対リスクは1.56 [95%信頼区間1.36?1.80])です。

アウトカムが死亡ということを考えると0.25%というのはかなり恐いレベルではないでしょうか。

【参考文献】
J Clin Pharmacol. 1992 Jan;32(1):32-6.
Drug-food interaction potential of clarithromycin, a new macrolide antimicrobial.
Chu S1, Park Y, Locke C, Wilson DS, Cavanaugh JC.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1531484

Intern Med. 2009;48(7):527-35. Epub 2009 Apr 1.
Efficacy of azithromycin in the treatment of community-acquired pneumonia, including patients with macrolide-resistant Streptococcus pneumoniae infection.
Yanagihara K1, Izumikawa K, Higa F, Tateyama M, Tokimatsu I, Hiramatsu K, Fujita J, Kadota J, Kohno S.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19336954

N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):689-98.
Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD.
Albert RK, Connett J, Bailey WC, Casaburi R et al.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21864166

JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1260-7.
Effect of long-term, low-dose erythromycin on pulmonary exacerbations among patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: the BLESS randomized controlled trial.
Serisier DJ1, Martin ML, McGuckin MA, et al
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23532242

PLoS One. 2014 Mar 6;9(3):e90047.
Macrolide therapy in adults and children with non-cystic fibrosis bronchiectasis: a systematic review and meta-analysis.
Gao YH, Guan WJ, Xu G,et al
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24603554

Azithromycin and the risk of cardiovascular death
N Engl J Med 2012; 366:1881-1890
Wayne A. Ray, Ph.D., Katherine T. Murray, M.D., Kathi Hall, B.S.et al

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1003833

Ann Intern Med. 2013;158(12):869-876.
Statin Toxicity From Macrolide Antibiotic Coprescription: A Population-Based Cohort Study
Amit M. Patel, MD; Salimah Shariff, PhD; David G. Bailey,et al
http://annals.org/article.aspx?articleid=1696644


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