今回は、錠剤の印字技術についてお話したいと思います。
ここ数年での格段の技術進歩により、錠剤の識別性が向上しました。薬剤師の皆さんであれば、一包化監査の時などにその技術を既に実感されているかもしれませんね。
まず、皆さんの馴染みが深い? 従来の刻印について、触れたいと思います。
杵による刻印錠
数年前までは、杵による打錠刻印方法が主流でした。打錠工程の際に刻印用杵を使用するだけで印刷工程を増やす必要がないため、ハード面でもコスト面でも有利であります。
ただし、杵による刻印錠の欠点として、打錠時のスティッキング(注)など杵付着による不良錠やコーティング時の刻印部分の埋まりによる不良錠が発生してしまうことがあり、これが製剤研究者の悩みの種になります。
スティッキング対策として、杵をコーティング加工して付着が少ないものを使用したり、刻印のレイアウトを工夫(例えば下図のように文字の形を変更したりします)したりするなどして不良錠の発生を回避します。
またコーティング時の埋まり対策としてはコーティング液組成を変更したりコーティング条件を変更したりして回避を目指します。
その他、杵による刻印のデメリットとして、文字数やレイアウトに制限があったり判読性も高くないことも挙げられます。中でも、ひらがなの刻印は、曲線や丸く囲まれた部分が多くなり、そこでスティッキングする可能性が高くなるため、多くの製剤技術者が採用しません。ひらがなの刻印錠を見ないのはそのためです。
(注):打錠障害の1つで粉体を杵で圧縮成型する際に、杵に粉体が付着して錠剤の表面が欠けた不良錠が発生すること。一般的に、結合剤(ヒプロメロースなど)・滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムなど)不足が原因。スティンキングが起きてないか、打錠終了後に杵をビクビクしながらチェックするくらい製剤研究者の天敵。
それでは、現在の印字技術について、触れたいと思います。
読者コメント