フランスにおける背景
近年のフランスにおける医療制度改革の動向をみると、医療費増加が非常に大きなものになっていたため、医療費対策としての医療制度改革が取り組まれたと示唆される。
医療政策は、1996年のジュペプランを基盤として、次々と社会保障制度全体にわたる改革案を提示してきたとされる。改革の基本理念は、社会的正義と責任の明確化、そして緊急性である。いわゆる『責任化原則と契約主義の徹底』を基本として構想している。
医療制度改革は時代のすう勢(人口・高齢化・コスト・透明性・医療資源の偏在)を見極めながら、フランス国民が医療・福祉を貧富の差なく受けられるように、リアルタイムでフレキシブルに変革を繰り返している。
その基本姿勢として、すべては国民のためを考え、質の高い医療・福祉等を提供し、費用体効果についても熟慮されていると感じた。これに関連して、「フランスの医師は『心は左』『財布は右』。医療は総枠管理、医療のビジネス化の抑制、医師は保険者のサラリーマン。」という言葉が印象的であった。
フランスの医療費抑制の考え方として、質および効率性の高い医療を提供することで医療費の適正化を行うことを前提としている。
具体的な取り組みとして、①EBM②ジェネリック使用促進、代替調剤(コンピュータープログラムの無料配布を利用しながら)③参照価格制度(注1)④ジェネリック使用率の契約⑤医療技術評価(通称HAT:費用対効果よりもずっと幅広い分野)等があった。また、医療保険全国支出目標(ONDAM)という考え方を取り入れ、保険者機能の強化を推し進めている。
(注1) 参照価格制度(TFR): ・2003年後発品の平均価格を参照とする参照価格制度を投入、ブランド薬を選択すると、後発品との差額は患者自己負担となる。ジェネリック医薬品P4P(Pay for Performance)の導入、医療の効率性、質指標を設定して指標をクリアすると、報奨金を与える。・ジェネリック医薬品P4Pとは、診療所医師および薬局薬剤師が後発医薬品処方率の目標値を設定し、それをクリアすると報奨金が与えられる制度。診療所医師の場合は、抗生剤、PPI、スタチン、降圧剤、抗うつ剤などの薬効群ごとに、薬局薬剤師の場合は、有効成分別に目標値を設定する。
以下、フランスの薬局・薬剤師に関わる規制、薬剤師の地位、薬剤師に開かれた職業、薬局の制度と役割、フランスにおける患者の薬の購入方法などを詳報する。
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