期 間
４月24～29日、場所:益城町福祉センター敷地内大分モバイルファーマシー（MP）。同期間活動したチーム:東京都薬剤師会、岡山県薬剤師会、兵庫県薬剤師会、佐賀県薬剤師会、長崎県薬剤師会、宮城県薬剤師会、熊本県薬剤師会、自衛隊など（毎日かなりの変動あり）。
活動内容
モバイルファーマシーでの処方せん調剤および投薬、各JMATチームに同行し、診療の支援および一般用医薬品やその他衛生材料の供給等、モバイルファーマシー（以下MP）での診療外の相談については一般用医薬品等での対応、避難所の衛生管理（手指、トイレ、各洗い場、二酸化炭素濃度測定～朝と夕方の２回）、各避難所で保健師と同行しての相談等対応、薬剤師のみのチームでの避難所の巡回（4月27日から開始）など。
１日の主な流れ
朝礼終了後、9時半ごろより各担当の支援へ。朝礼においては対策本部の方針などの説明を受け、各薬剤師会のチーム内でその日の活動への参加人員等の設定を行う。
食事などは各自取れる時間に。PMの周辺にテントを張り、休息や書類作りなどする。トイレは避難所の仮設トイレを利用させていただく。
夕方（７時頃）に１日のまとめを行い、各活動内容や気付いたことを挙げて改善していく。また、現地を離れるチームから適宜申し送りなどを行う。
MP内の医療用備蓄品目は約150品目、フェーズによってニーズが変動するため、臨機応変に対応する。
一般用医薬品は約30～50品目、在庫がなくなるものがあるなど、変動が激しい。虫除けスプレーや、殺虫スプレーなども備蓄、主に避難所へ配給。
自身の活動内容
上田薬剤師会の薬剤師の特徴である「一般用医薬品の知識と経験」を活かし、刻々と変化する避難所の環境に合わせたOTC医薬品の提案や、適正使用にかかわる説明など、薬剤師間の共有を図ることに注力。
"天草JMAT隊”と同行していた"岡山隊”の薬剤師から引き継ぎを頂き、26・27日の２日間は"天草JMAT”と同行支援を行った。
27日午後は"長崎隊”の薬剤師に引き継ぎをし、28日は上田薬剤師会の八柳氏と避難所の薬剤師単独巡回（試験的）ならびに保健師との意見交換を行った。
１カ所めはデイサービスセンター『いこいの里』を避難所として開放した施設で、60名程度収容が可能なところです（天草JMAT隊と同行）。ここにはデイザービスの利用者や、家屋がダメージを受けている近隣の方などが避難していました。
避難してきている方々の年齢、車の有無、家屋の損壊状況、家族構成などなどは様々であり、避難している方の中で、階段の上がり降りできる比較的若い方は２階にスペースが確保されていました。
大部屋は薄い発泡スチロールが敷かれ、布団や毛布を掛けるという程度でしたが、幸いにも電気は復旧していたので、エアコンなども必要であれば使用可能という環境でした。
トイレは介護用トイレのため広く、比較的快適な空間です。消毒に関しては、薬局が配布しており、スリッパは全館共通のためトイレ専用のスリッパを設置しました。
２カ所めは『益城中央小学校』です（天草JMAT隊と同行）。ここは約150人収容可能でしたが、駐車場で生活している方もいらっしゃいました。
体育館が主な避難所となっており、その他１部屋だけ教室を利用していました。水は体育館の出入り口外に設置してあり、トイレは仮設です。１度外履きに履き替えるため、トイレ関係の衛生面は高く保持されていました。手洗い場に関しては、その周辺に汚水を貯めてしまっていたためボウフラが湧いてしまったそうですが、私が行った時には改善されていました。ここでは主にJMATと同行し、服薬支援や相談を行いました。
３カ所めは『飯野小学校』です（八柳氏と同行、現場で保健師や大阪JMATと活動）。150人ほど批難しているとの情報でしたが、主に車中泊のようであり、昼間はほとんど人や車は見られませんでした。
一方、小学校に残っている方はお年寄りが多いという状況です。学校の教室を保育所のようにして、子供達と遊んでくれるNPOが活動していました。また、１室を診療所として使用して診察等を行っていました。
ビタミン剤や緊急用の一般用医薬品（特に痔の薬や鎮痛剤）を配置し、"大阪JMAT”の医師の判断で使用してもらえるようにしてきました。
熊本市内は徐々に生活環境が回復期に差し掛かっており、水道やガスの復旧も進んでいました。そのため、若い方や車を運転できる方などは"かかりつけの病院”や薬局へ医薬品など求めに行っているようでした。
飲食店や大型入浴施設なども徐々にですが復旧しており、通える方はそちらへ行くようになってきていました。状況としては「避難所内での弱者の方々の支援」に移ってきたと言えます。
まとめ
３カ所の避難所で言えることは、「衣食住している環境にプライバシーはほとんどない」とうことです。声も臭いも音もすべて隠せない環境です。避難所によってはスペースを十分に取れず、身体を伸ばして休めることも難しい状況でした。二酸化炭素濃度等は薬剤師が管理していましたが、全ての避難所がそうではなかったようです。
震災発生後の中期に差し掛かってきていることもあり、ストレスは高めだと感じました。けんかのようなことも起きている現状です。体力も栄養面のバランスも限界に近い状況であり、感染症のまん延や帯状疱疹の発症、口内炎などの症状の相談が多くなりつつありました。
薬局として「一般用医薬品のビタミン剤などで対応」ということで配給されたビタミン剤（ビタミンＣやアリナミン）をできるだけお配りしました。
また、トイレの問題は様々で、「食事が原因」「トイレの形状（和式は不便）」「臭いや暗さ」「ステップが高くて登れない」など、子供やお年寄りの便秘、痔などが徐々に表面化しており、一般用医薬品でボラギノールを推奨してきました。
解熱鎮痛剤はニーズに合わせられるよう、単一の成分のものを提案。タイレノール（アセトアミノフェン300mg）、リングルアイビー（イブプロフェン200mg）。せき止めはコデイン系の成分は副作用に便秘があるため、受診もしくはぺラックスイート（メチエフ含有）を提案しました。
薬剤師のできることは、多岐にわたってあることが確認できました。
特に声掛けはとても重要だと感じました。病気などもそうですが、避難所での制限された暮らしの中での不安や、「何げなくだが感じている変調」に耳を傾けるようにしてきました。
手続きの必要のない有用な一般用医薬品を利用し、できるだけ早く手を差し伸べることができたのではないかと思います。もちろん、受診勧奨や医師の判断を求めることも多々ありました。
そのような中で、JMATの医師も必ずしもジェネラルな医師ばかりではないことが分かりました。患者さんの"お薬手帳”を見ても「何の薬か判断がつかない」場合がありました。
原因は一般名処方であることです。医師の専門外の薬が使用されている場合などは分からないことが多いようです。そのような時、薬剤師が側にいると瞬時に薬の一般的な薬効をお伝えしたり、用法などに関しても「避難所暮らしの環境下から判断して投薬を継続すべきか否か」を共同で検討したりできます。
また、MPに在庫のない医薬品の場合は在庫の中で代替案をお伝えするなど、処方設計の補助的活動ができました。私は、普段から日常生活に近い薬剤師であるほど、このような時は力を発揮できると確信いたしました。
災害時は、フェーズによって薬剤師への期待も変動すると考えられます。
けがや急な体調の変調に造けいの深い病院勤務経験のある薬剤師。衛生管理など生活環境を管理できる保健所勤務経験のある薬剤師、一般用医薬品をはじめとする医薬品全般の幅広い知識と経験のある薬局薬剤師、避難所での伝達事項など薬局機能を管理・運営していくことができる事務系に強い薬剤師などがあると思います。
全てを経験することは難しいですが、チームを組む際に自分の特徴を理解し、活動できるよう、日々努力しておくべきだと感じました。
熊本・大分の一日も早い復興を願います。
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