はじめに
このところ薬価制度に関する議論が喧(かまびす)しい。議論の発端はオプジーボであろう。
周知のとおり、オプジーボ(一般名ニボルマブ)は、免疫チェックポイントの一つであるPD-1(Programmed Death-1)を阻害する抗体医薬であり、免疫チェックポイントについては、京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームが発見したもので、ノーベル賞授章が期待されている。
当初、オプジーボはメラノーマの新薬として薬事承認を受け、予想売上高も31億円とされたが、その後肺がんにも効能追加され、患者一人当たり年間約3,500万円かかり、薬剤費への影響が1兆7500億円などともいわれるようになった。
この問題も背景に、医薬品の価格が高すぎるのではないかとか、果ては「国の財政が破綻する注などの論調も出てきた。
オプジーボは、わが国の優れた基礎研究をもとに生み出された革新的な新薬であり、がん治療にも大きな革新をもたらしたものであって、わが国の薬価算定の仕組みに基づき、根拠あるプロセスのもとで価格設定されたものである。
しかしながら、現在の多くのマスコミは、イノベーティブであっても高額な新薬を発売することが「悪」であるがごとくの論調に偏っている。
一方、高額医薬品の「問題」(そもそも問題といえるかどうかも議論して行く予定であり、カッコ付で表記した)と平行して価格設定が効果に見合う価格になっているかという「費用対効果評価」の議論も盛り上がっている。
費用対効果評価は薬剤費削減のツールとして使えると信じ込まれているようである。
そこで、今回から数回に分けて、費用対効果、薬剤費、薬価制度について議論して行く。
まず今回は、費用対効果評価についてみていきたい。
注 例えばNHK「"夢の新薬” オプジーボと財政危機」http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_1012.html
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